「なにがおかしいわけ? 私が岩上に負けてるのがおかしいの?」
「そ、そんなんじゃねぇけど……」
久貴はとっさに視線をそらしていた。


由佳に嫌われたら後々面倒なことになる。
それこそ、第2の岩上みたいなことになる可能性が高い。
「とにかくさ、そんなに気に入らねぇなら、もっとイジメるしかねぇだろ」


久貴の答えはそれだった。
自分が標的にならないためにも、常に由佳を満足させておかないといけない。


合成写真や個人情報流出に関しては自分たちのやったことだってバレないように動いていたけど、もうそうは言ってられなくなってきた。
それもこれも、岩上が学校に来続けているのが原因だ。


久貴は由佳にバレないように小さく舌打ちをした。
そもそもどうして由佳がここまで岩上に執着しているのか、誰も知らないことだった。


なんとなく由佳の言葉に従って岩上を追い詰めてきたけれど、その理由はわからない。
「なぁ、どうしてそんなにあいつに執着するんだ?」


久貴はこの時初めてその質問を由佳へむけた。
由佳は久貴からの質問に一瞬顔をしかめ、そして「嫌いなだけ」と、短く返事をしたのだった。