気がつけば由佳は奥歯を噛み締めていた。
なにをしても淡々と授業を続ける岩上。
襲われたかもしれないのに学校へ来ている岩上。


その存在はただ疎ましく感じていたものから、微かな恐怖を感じる存在へと代わりつつあった。
なんだこいつは。
なんでこんなにも平気な顔で毎日毎日学校に来れるんだよ。


自分ならとっくにギブアップして逃げているかもしれない。
そう考えると余計に腹が立ち、得体のしれない恐怖に襲われる。
「なんであいつまだ学校に来てんの」


恐怖から、そんな愚痴をいつものメンバーにこぼしていた。
もう二度と来るはずはないと思っていた人間が、翌日も現れた。
それは由佳にとって予想外のことで許しがたいことでもあった。


「結構精神が強いんじゃねぇの?」
久貴が苦笑いを浮かべて言う。
由佳は笑っている久貴を睨みつけた。