そう考えれば、最初に由佳に届いた動画の宣伝だって、キツネ面が個人的に作成して送ってきたもので間違いなかった。
キツネ面に仲間がいるとすれば、それくらいのことできるはずだ。


由佳は悔しさに奥歯を噛み締めた。
自分たちはまんまと騙されてここまで来たのだ。


せめて口を聞くことができればキツネ面、岩上への文句のひとつも言えたのに、それすら言えないまま好き勝手されている。
それが悔しくて仕方なかった。
「次はお前かなぁ?」


キツネ面が久貴の前で止まる。
久貴は眼球が転び出そうなほど目を見開いて左右に首を振った。


「へへっ。そんなに怖いか?」
ボイスチェンジャーで変換された奇妙な声が煽る。
久貴は必死に体を揺らして椅子と共に横倒しに倒れた。


そのまま蛆虫みたいに這うようにして出口へと向かう。
けれど、そんな鈍い動きで逃げ切れるわけがなかった。
キツネ面はおかしそうな笑い声をあげて久貴の行く前に立ちはだかった。