大垣西高校2年A組の教室内には今日もにぎやかな話し声が聞こえていた。


「由佳、メーク変えた?」

「わかる? リップ新色にしたんだぁ」

「いいなぁ、それ私も狙ってたやつ!」


堀川由佳のみずみずしい唇を見て、宝来和美がため息を吐き出す。


「うらやましがるなよ。和美が同じ化粧したって無理なんだから」

「久貴ひどい!」


いつも一緒にいる古屋久貴の心無い一言に和美が頬を膨らませたとき、教室前方から大月進が入ってきた。
進は由佳を確認するとすぐに笑顔になって近づいてくる。


「おはよう、由佳」

「おはよう進」


由佳は手鏡を机に置いて自分の顔ばかりを熱心に見ながら返事をした。
その態度に進と久貴が軽く目を合わせる。


「由佳、もっとちゃんと返事してやれよ」

「え? なにが?」