『あー…楓夕』
「ん?」
突然言いづらそうに詰まった高嶺の声に違和感。
名前を呼ばれるだけでドキドキする、なんて…今更変かな。
『今年は、俺とたくさん関わってくれてありがとう』
「…それ、クリスマスの日に聞いた…」
『ん、そだね。…この続きは、今言うべきじゃないか』
意味深な言葉を残して、高嶺はふぅ、と息をついた。
びゅう、と冬の冷たい風が窓を揺らして。
電話の先から聞こえる高嶺の吐息に、心臓が高鳴る。
『楓夕、窓の外見て』
ドッ、ドッ…。
期待した胸が張り裂けそうになる。
返事するのも忘れて、あたしは慌てて窓に駆け寄り、カーテンを開けた。
下を覗くと。
「なっ……なんっ…」
泣き崩れてしまいそうになる。
だって、会いたくて会いたくて仕方なかった人が、そこにいたから。
『年越しは楓夕とって決めてたんだ』
遠目でも高嶺が笑っているのが見えた。
あたしはまた返事もせずに、上着を羽織って、スマホをポケットにしまいこみ、部屋を飛び出した。