「…楓夕、俺は。いつでも、楓夕のことしか見てなかったよ」
うん。
分かってたよ。
分かってたのに…高嶺は悪くないのに…。
あたしが子供みたいに拗ねてるだけ。
「…でも、伝わってなかったんだね」
違う。
そんな顔させたかったわけじゃない…。
「俺に好きでいられるの、迷惑?」
ダメ。
それ以上、何も言わないで。
「…迷惑だよね。俺、もう楓夕に関わんない」
ドンッと大きな落石があったような衝撃。
頭がズキズキ、痛い。
心なしか目まいもする。
…高嶺に、完全に嫌われた。
泣き出しそうな胸をおさえて、なんとか喋ろうとしても。
許されないような、そんな気がして。
ぼーっと突っ立っていたら、いつの間にか高嶺はあたしの前から姿を消していた。
「…は、」
短く吐き出した白い息。
反対に、あたしの心には黒いモヤがかかっていた。
せっかく好きだと自覚できたばかりだったのに、これからどうしよう…。
…誰かを好きになるなんてはじめてだから、どうしていいかわからなかった。
混乱してた。
…でも、あの言い方はなかった。
言うべきじゃなかった。
だけど全部、手遅れ?
ねぇ…高嶺。
どうすれば、もう一度あたしを好きになってくれる?