「…今の子、誰?」
「ん、気になんの」
「別に」
「楓夕もヤキモチ妬いてくれるようになったかぁ」
はぐらかして答えるのを渋っているように見えて、少しだけイライラした。
「違うし」
「はは、ごめんって。楓夕が嫉妬とか夢のまた夢だよな」
…夢なんかじゃないって言ったら、どうする?
「さっきの女子のことね。俺も知らない。見たことないし、たぶん別クラ?」
「…知らない女子からも惚れられるって、さぞ楽しいでしょうね」
カッ…と全身が熱を持った。
悔しかったのか、それこそ本当に嫉妬なのか、わからない。
だけど…。
思ってもないことを口に出してしまうほど、あたしは切羽詰まっていた。
「…楓夕? 何言ってんの」
「別に…高嶺なんて、彼女選び放題なのにな、と思って」
最初の頃に抱いていた疑問。
心の中で想うだけで口にしたことはなかった。
…なんで。
あたし、どうしたいの?
気づいたらゴミ捨て場についていて、あたしたちはゴミ袋を下ろす。