泣きながら走っていく音だけ聞こえた。
…どうしよう、高嶺、こっちに来る?
「聞いてたのバレバレだよ、楓夕」
「っ…!?」
名前を呼ばれると思わなくて、危うく腰を抜かすところだった。
おずおずと校舎の影から体をだして、高嶺と顔を合わせる。
「な、なんでわかっ…」
「ん? ゴミ袋はみ出してたもん」
さーっと血の気が引いていく。
頭隠して尻隠さずとは、まさにこのことだ。
…盲点だった。
そりゃ、こんなに大きいごみ袋を両手に持ってたらそうなるよ。
「悪趣味だね、楓夕?」
近寄ってくる高嶺に、キッと睨みをきかせる。
悪趣味…って。
別にわざとじゃないし。
あたしの通り道に高嶺たちがいたから…。
「それ、片方持つよ」
「え…」
「ゴミ出しデートだ」
…なにそれ。
ひょい、と軽々持ってしまう高嶺は、やっぱり男子なんだなぁ…と再認識させられる。