「…あ、ありがとう東都。その、連絡遅くなってごめん…」
人通りが多かったため、少し静かな裏路地にやってきた私たち。
黙り込んでしまった東都に謝ると、いつになく不機嫌そうに。
「…さいあく。なに他の男に触らせてんの」
文句を垂れて、強引に腕の中へと閉じ込められた。
「っご、ごめん…」
「俺が来なかったら、今頃先輩食われてたよ」
食…!?
「さっ、さすがにそれは…」
ないとも言い切れないけど…。
なんだか自意識過剰な気がして、肯定できず言い淀むと。
「凛子先輩のそーゆーとこ、嫌い」
「っ…!!」
今まで散々バカとかアホとか色々と言われてきたけれど。
“嫌い”なんて直球すぎるものは、言われたことない。
もう…呆れられちゃった…?
人の心配ばかりしているくせに、危機感がないから。
私、ここで振られる…?
今、東都に別れを告げられたら、私は…。
「っ…」
破局する未来を想像したら、涙が零れ落ちてしまいそうで。
我慢するため必死に口を固く結ぶと、涙の代わりに唇が落ちてきた。