ひなたはもう少しだけいると言うけど、もう不安もないし置いて帰っても大丈夫だろう。



「じゃあ、私はお先に…」



そう言ってカバンを取り、少し歩いてから店を出ようとしたとき。



「凛ちゃん、もう帰っちゃうの?」



「え?」



腕を引かれて振り返ると、そこにはさっきの絆創膏を気にしていた人がいて。



「俺、凛ちゃんどタイプなんだよね。彼氏持ちでもいいから、連絡先だけでも交換しない?」



ずいっと体を寄せてくるから、反射で反対方向に顔を背ける。



「っや、やめてください…!」



「彼氏には適当言っとけばいいじゃん。ほら、外寒いしちょっとくらいさぁ」



それでもなお誘ってきて、怖いのに体が動かない。



っ…やだ、怖い…。



助けて、東都っ…!!



もう耐えきれなくて、心の中で東都の名前を叫んだら。



「どうせ言わなきゃバレないんだし…」



「誰にバレなきゃいいって?」



大好きな人の声だけが、冷たい空気を震わせた。



「人の彼女に気安く触んな」



「っ、東都…!」



東都を呼ぶと掴まれていた腕がパッと離され、真っ青な顔をした男子は「す、すみませんでしたぁ!!」と言いながら走り去っていった。