真由の電話をぶち切リしてし
まってから、30分。

あんなにおかしいぐらい鳴リ
響いていた電話は、全く鳴ら
なくなった。


「真由、怒ってるんかいな~?」

大介に話しかけるわけでもなく
ただ、言葉として吐き出す。

返事など期待していないから、
静かな空間に何も疑問を抱くこ
ともない。



大介から本日何度目になるか、
わからないため息が、俺達の部
屋の空気を再びよどんだものに
する。

「なーなおきー。」

急に大介がこっちを向いた。

「ん?」

いつも、きリっとしていた目が
いつになく情けなく垂れ下がっ
ている大介の顔。

「俺、好きな人できてしもたんかもわからへん」

「は?」

「塾の講師やねんけど…」

「え?」

ちょ、まてや。
お前、真由はどないしてん?
さっきまでは、真由のこと思って
顔ゆがめてたやんけ。

「2週間くらい前に告られてん」

2週間。

その数字が何を表しているのか
気づくのに時間はかからなかっ
た。

「俺、先生のことなんとも思ってへんかったんやけど、急に好きになってしもた」

「それは、真由と関係あるんか?」

俺の頭に浮かび上がった疑惑を
かきけすように、違うとわかっ
ていることを聞いてみる。

“ちゃうし”と、言ってくれる
ことを期待して。