わたしがじっと見つめ返していることに痺れを切らしたのか、はたまた呆れたのか、「はあ、」と短いため息が落とされた。



「……ほんとののかって」


「ーーっ、」


「わけわかんねえ」



顎を長くて綺麗な指で持ち上げられて、わたしの反応を確かめるようにゆっくりと近づいてくる。

その時点で既に、何かの魔法にかかってしまったみたいに動けなくて、動きたくなくて。


彼から動きを止めることはなく、

ふわりとひとつ、重なった。


まるでそれが、何かの合図のように。



「逃げないんだ。ずっと俺避けられてたのに」


「…にげ、ない …よ…っんん」



今度は性急に奪われたそれは、わたしを甘く縛り付ける。

深く、息を吸う暇も与えてくれないほど。



「……っは、」


「なんで急に避けんの」


「…っ、ぅ」


「ずっと俺に溺れてくれればいいのに」


「…んん……っ!」



それはわたしの台詞だよ、琉唯くん。


離れたい、離れたくない。わたしを見てほしい。

ーー好き。


いろんな感情が色とりどりに混ざり合って、ぐちゃぐちゃになって、理由も分からない涙が出た。



わたしはもう堕ちてしまっているから、はやく、




「ーー俺と同じとこまで堕ちてよ」




ーーーわたしと同じところまで溺れてよ。




「……るいくんの、ばか」