「気をつけて帰ってね?……ごめん、送ってあげられなくて」
「琉唯くんから『ごめん』が聞けただけで珍しいから十分」
「……」
今から仕事なんだよね、と眉を下げて言う琉唯くんを容赦なく突っぱねた。
このままだと家まで送らせてしまう勢いだったから。
そんな彼はなんと、ドラマ出演が決まったのだとか。
……わたしのことなんて、気にしなくていいのに。
それともなんだろう、仮にも病人だから、このまま放っておくと後味が悪いとか?
……それとも、ただ単に善意か。
どちらにしても、わたしだけが胸を痛める結果になるんだから。
悶々と考えながら俯いて、足元を見ていると、ふいに頬に手が添えられた。
そのまま顔がぱっと、強制的にあげられる。
「……まだ調子悪い?やっぱりもう少し休んでいく?」
「……っえ」
不安げに見つめられるから、わたしの鼓動は容赦なく高鳴る。