「あぁ……そうだったね。引き止めてごめん」

「ううん。誘ってくれてありがとう」



何かを察したのか、追及せず解放してくれた。

「ごめんね。また次の機会に」と、手を合わせて再度謝罪。

急いで教室を出て、階段の踊り場にある大きな鏡で身だしなみを整える。


これから彼氏と放課後デート?
好きな人に告白しに行くのかな?


そう言わんばかりの視線が鏡越しに突き刺さるけれど、今の私にはノーダメージ。

胸元まで伸ばした茶色の髪を結び直し、スクールバッグからスマホを取り出す。


なぜこんなにも入念に確認していたのかって?

それは──。


【たった今学校に着きました。いつもの場所で待ってます】


大好きな彼氏が修学旅行から帰ってくるから……!


ロック画面に表示されているメッセージにむふふと含み笑いを浮かべた後、軽い足取りで昇降口へ。

駐輪場に自転車を取りに行き、いつもの場所──校舎裏へ足を運ぶと。



久代(くしろ)くんっ!」