おしとやかな笑顔で口に人差し指を当てた聖奈ちゃん。


残念なことに、久代くんも私と同様、塾に通っているため部活はやっていない。

けど……似たタイプの人は、1人いる。


帰宅してすぐその人物に連絡を入れた。







「あははっ。彼氏くん、なかなか鬼畜な条件出したね〜」

「もうっ、笑い事じゃないですよ!」



週の折り返し地点、水曜日。

2人並んで自転車を押しながら、街灯に照らされた夜道を歩く。



「ごめんごめん。でも、気持ちはわかるな。俺も迷惑かけたくなくて、全部あっちの都合に合わせてたから」

「先生も無責任男だった時があったんですか⁉」

「付き合いたての頃はね。今はないよ」



眉尻を下げて「酷い言われようだな」と笑った時永(ときなが)先生。

黒髪と眼鏡が印象的な4つ上の大学生で、私が通う塾の英語講師を務めている。

私の家から徒歩1分のアパートに住むご近所さんでもあり、時間が合う時は一緒に帰ってるんだ。