「お仕事中のご食事はどうされているんですか?」

 急に私の仕事の話になり、また顔をあげてしまう。
 微笑む春政さんの顔があった。

「やっぱり、子どもたちと一緒に召し上がっているんですか?」

 私のことに興味を持ってもらえると思うと、嬉しかった。

「いえっ。私の担当クラスは離乳食の子がほとんどなので一緒には摂らないですね」

 なかには幼児食に移行している子もいるけど、初期中期後期と月齢に合わせた個別の食事を摂っている子の方が多い。
 用意された給食を食べさせるだけとはいえ、そのだけがまた難しい。
 食べる力も発達途上できちんと飲み込めるようサポートしないといけないし、ただ食べさせるだけでなく発達のサポートになるよういろいろと考えなければいけない。
 なにより喉に詰まらせないよう神経を尖らせて、初めての食材は家庭で試してもらってからというルールにはなっているけどそれでもアレルギー反応が出ることだってある。
 保護者の方にも離乳食の進み具合を共有したり、頭もいっぱいだ。

「大変そうですね」

「でも、他の先生と交代でしっかりは休憩を取ってますから」

 二歳児クラスは先生も一緒に給食を囲んで雰囲気つくりもしていたりする。
 一緒に食べるのは楽しそうだけど、食べながらみんなの様子にも気を配って介助しながらってなると、あれはあれで大変そうだった。
 職員室で交代しながらゆっくり一人で食べられるのは贅沢かもしれなかった。
 園児と一緒に食べるわけじゃないからと給食代も節約した、お弁当と呼ぶのもおこがましい具沢山おにぎりを頬張っているだけだけど。なにがあるかわからないから、ささっと食べ終わってすぐに動けるようにしておきたい思惑もある。

「春政さんは、どうされているんですか……?」

 財閥御曹司のお昼事情、気になった。
 お抱えシェフのお弁当? それとも出張料理? はたまた高級フレンチに外食?

「僕は基本的に昼食は抜いてますね。食べるとどうも眠くなる体質みたいで、仕事の効率が落ちるので」

 予想外の答えだった。

「体、持ちますか……?」

 子どもたちを抱っこしたり意外と肉体労働な影響もあってか、私はお昼を抜くなんて考えられない。遅くなるぐらいならなんとかなるけど、抜いたりしたら倒れる自信がある。
 基礎体力の違いだろうか。
 じっと、春政さんの体を見てしまう。
 デパートで私がぶつかった胸板は厚かった気がするし、二の腕とかもしっかりしてそう。スーツフェチの自覚はあったけど、筋肉フェチも素養あったのかな。

「朝晩はしっかり食べていますから。不思議と朝と晩は食べても眠くならないんですよね。なぜか昼食だけ……」

 喋る春政さんから目が逸らせなかった。