試合終了のホイッスルが鳴り、一瞬コート内が静まり返った。

その後僅差で勝利した、我が美しの丘高校のバスケ部とその応援団が歓声をあげ、選手達はハイタッチをして喜び、その後ベンチへと戻っていった。

とともに、幾人かの女子が五代君の元へ群がっていった。

五代君は女子生徒からタオルや冷たい飲み物を差し入れされ、それを見た他のバスケ部員に冷やかしの言葉を投げかけられていた。

私はカバンに入れてあった手作りクッキーの入った紙袋を出し、野乃子に手渡した。

本当は親友のあずみに渡そうと思って持って来たものだけれど、今日あずみは風邪で欠席。

綺麗に包装したものを家に持ち帰るのもなんだかもったいない気がして、気付くと野乃子にこう提案していた。

「野乃子。これ五代君に渡したら?」

「え?皐月、作ってきてくれたの?」

野乃子が目を丸くしながら、その紙袋を受け取った。

「うん。別にわざわざ作ったわけじゃないよ?自分の分を作った余りだから、気にしないで。」

「わーん。皐月ありがと!」

野乃子が私に抱きついた。

「私に抱きついてる場合じゃないでしょ?早く行かないと五代君帰っちゃうよ?」

「ねえ。皐月も付いてきてよぉ。のの、一人じゃ恥ずかしいよぉ。」

野乃子が私の腕を掴み引っ張った。

そんな甘えた仕草も、ゆるふわ女子の野乃子がすると様になっていて、少し羨ましい。

「・・・やれやれ。仕方がないなあ。」

頼まれると嫌と言えない私は野乃子の後ろに付いて、五代君に近づいていった。