「少し離れた方がいい」




智道に言われてようやく自分がメリーゴーランドに近づき過ぎていることに気がついた。

腰ほどの高さの柵はあるものの、これだけ回転していてはさすがに危険だ。

メリーゴーランドからは由紀子の悲鳴が聞こえてくる。

だけど今助けにいくことはできない。

なにもできずにただ見ていることしかできない。

胸の中に強い焦りを感じるものの、自分の無力さを痛感することしかできない。

私はなにも言えずに高速回転するメリーゴーランドを見つめる。

由紀子は今必死にしがみついて振り落とされないように踏ん張っているはずだ。

頑張れ。

頑張れ!

必死に祈ったところで役立つかどうかもわからないのに、また手を胸の前で組んでいた。




「さぁて、そろそろクライマアックスかな」




クマが呟いた次の瞬間、メリーゴーランドの回転スピードが最速になった。

グンッと突然上がったスピードに由紀子の手が棒から離れるのが見えた気がした。