クマの言葉を合図にしたように由紀子が棒から片手を離してピースサインをし始めた。

一見楽しんでいるように見えるけれど、その笑顔は引きつている。

きっとこれも自分の意思ではないのだろう。

指先の一本さえも行動を奪われてしまっているのだ。

その間にも回転は早くなり続けていて、目で見ても違いでわかるほどのスピードになっている。

由紀子はそれでも無理やり笑顔を作らされている。




「楽しそうでよかったじゃん」




由紀子のチームの女の子がクスクスと笑いながら呟くのが聞こえてきた。

これが楽しんでいるように見えるなんてどうかしてる。

回転が早くなればなるほど由紀子の顔色は悪くなっていく。

不安なのか目には涙もにじみ始めていた。

しかし回転は止まらない。

最初に比べれば三倍くらいの速さに到達している。




「ねぇ、そろそろやめてあげなよ」




私はクマに近づいてそう言った。

もう充分メリーゴーランドに乗ったはずだ。