繭乃のつぶやき声に驚いて視線を向ける。

繭乃は園の地図をお尻に敷いて座っていた。

「あんなことしても、アーチの向こう側がどうなってるかわかんないのにね」

フェンスの向こうはすべて森になっていた。

アーチの向こうにも森が広がっているかも知れないと言いたいのだろう。

だけど私はその可能性は低いと思っていた。

森だとしても、車が通れるほどの道はあるはずだ。

じゃないと、私達をここまで連れてくることができない。

私はまた無意識の内に胸の前で手を組んで祈るポーズをしていた。

そして登っていく男の子を見守る。




「俺たちも登ろうぜ!」




下で待機していた数人の男の子たちも腕力に自信のある子たちはフェンスの凹凸を使って登り始めた。

最初に登りはじめた男の子はすでにフェンスの頂上に到達していて、どうやってアーチをまたぐか思案している様子だ。

だけど、アーチにも模様が施されているから、うまく手や足をひっっかけることができれば向こう側へ行くことができるはずだ。

暑さも忘れて男の子たちが登っていくのを見守る。




「もう少しだ! 頑張れ!」




智道が下から声をかけているのがきこえてきた。

そうだ。

私にだってできることはある。