「ふざけんなよ!」




男の子のひとりがスピーカーへ向けて怒鳴りつけた。

その目は釣り上がり、怒りで顔が真っ赤に染まっている。




「ここから出せ!」



「何が一千万円だ! 誘拐してきたくせに!」




ひとりの声が引き金となってあちこちから怒号が上がる。

そのとき、男の子がシャッターの凹凸に足をかけて登り始めたのだ。

シャッターの上部はアーチになっているが、その上はアーチの屋根になっている。

うまく上りつめることができればそこから逃げることができる!

私は息を飲んで男の子を見守った。

アーチの天井まで10メートルはある。

大橋くんが登ったフェンスと同じくらいの高さだ。

落ちたらひとたまりもないが、下にいる男の子たちからは「頑張れ!」と、声が聞こえてきた。




「ばっかじゃないの」