クマはあいかわらずの声色で話かけているから、それが余計に恐ろしい。
「ちょっと事務所まで来てくれる?」
「嫌だよ! 俺もうバイトやめるから! 離せよ!」
お兄さんもクマの異様な雰囲気に気がついたのか、さっきよりも更に暴れ始める。
「全く、世話がやけるなぁ」
クマはそう言ったかと思うと、着ぐるみの中からなにかを取り出した。
それが注射器であるとわかるまで数秒の時間が必要だった。
針の部分が怪しく光り、中の液体は見たことのないグリーンだ。
お兄さんがその注射器に気がついたときにはすでに遅かった。
クマはなんの迷いもなくお兄さんの首に張りを突き立てていたのだ。
グリーンの液体が体内へ注入されていく。