実際に自分が労働してみた尋は私以上に余裕がありそうだ。

スマホも財布もなくて、外部と連絡もとれない。

今のところ外へ出る手段もないのにこれほどゆっくりしていられるのだって、誘拐犯の策略のひとつかもしれないのに。

そう考えていたとき、笑い声が聞こえてきて視線を向けた。

そこでは絶叫系マシーンに乗っている一組のグループの姿があった。

船の形になった遊具が大きく左右に揺れている。




「キャハハハハ!」




恐いものが好きなのだろう、女の子の甲高い笑い声が響く。




「ねぇ、楽しそうじゃない?」




繭乃が智道の腕を掴んで揺さぶる。




「こんな遊園地で遊ぶなんて、ちょっとおかしいだろ」




智道は私と同じでまだ警戒しているようだ。




「なにがおかしいの? 楽しそうじゃん!」




繭乃はなにも考えていないのか柔軟性が高いのか、さっきからキラキラとした目で園内を見つめている。