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もし食べ物の中に毒が入っていたら?

そんな不安をよそに繭乃がクレープにかぶりついた。

口の端にクリームをつけながら「美味しい」と頬を緩ませる。

ごくんっと飲み込むのを見て私も恐る恐るクレープに口をつけた。

もっちりとしたクレープ生地に、甘すぎないクリーム。

チョコレートソースとバナナの相性も抜群だ。




「あ~美味しかった!」




相当お腹が空いていたのだろう、繭乃はものの5分ほどですべて食べきってしまった。




「やっぱりここは社会学習の場所なんじゃないか?」




お腹が膨らんで少し余裕が出てきたのか、尋がそう言い始めた。




「でも、私達ここへ来た記憶がないんだよ? 誘拐されてきたに決まってる!」




社会学習の一貫だとしても、普通じゃないことは明らかだ。




「そうだけど、別に危害を加えられているわけじゃないし、激しい労働を強いられてるわけでもない。そんなに気にすることないだろ」