「恵利も腹が減っただろ?」



「うん、まぁね」




尋の質問に頷いたものの、正直まだ頭が混乱していて空腹を感じるどころではなかった。

自分の処置費用のために働いている大橋くんのことも気になる。




「あれ見ろよ」




そう言われて指が刺された方へ視線を向けると、別のチームがジャンケンをしているのが見えた。

その隣にはクマの着ぐるみが立っていて、勝負の行方を見守っている。




「あれって、クマが言ってたゲームをしてるの?」



「たぶんそうなんだろうな。あ、男が負けたな」




ひとりの男がジャンケンに負けてお好み焼き屋の屋台へと歩いていく。

お店の人となにか会話をしたあと、すぐにエプロンが手渡された。

男はエプロンを身に着けて屋台の中に入ると、手伝いをしはじめたのだ。




「あれが労働か。以外と普通だな」




男は店の人に指示を聞いて動いているだけで、他にかわったことはしていない。

その間に他のメンバーは男が焼いたお好み焼きを頬張り始めている。

その様子を見ていると途端に空腹感が湧いてきて、お腹がぐぅと音を立てた。

しばらくお好み焼き屋の様子を見ていると、男は30分ほど労働をしたあと、自分の分のお好み焼きもゲットして屋台から出た。

そのときにはすでにエプロンは外されていた。