「俺にもわからない」




尋が眉を下げて左右に首を振る。

そういえば尋と私は同じ紺色のジャージを着ている。

けれどそれは見慣れないものだった。




「このジャージはなに? 学校指定のとも違うみたいだし、私こんなの持ってないけど」



「俺も、ここで目を覚ましたときにすでに着てたんだ。もしかしたら誰かに着替えさせられたのかも」




尋の言葉に全身に寒気が走った。

わけのわからない場所で目覚めた上、勝手に着替えまでさせられたのかもしれない。

見えない誰かに素肌を見られたのかもしれないと思うと鳥肌が経つ。

私は自分の体をきつく抱きしめた。

とにかく、こんなところから早く帰りたい。

そう思ったときだった。




「痛ったぁい。なんなのよここは」




文句を呟く女性の声が聞こえてきてそちらへ視線を向けた。

見ると隣のコーヒーカップの中から同じジャージを着た女性が起き上がったところだった。

その奥には男性の姿もある。