大橋くんがしどろもどろになりながら説明をする。

その指先が微かに震えているのがわかった。




「お金がないのに、ここに来たの?」



「こういう場合は無料なんじゃないんですか?」




たまらず智道が口を挟んでいた。

女性はそれでも視線を大橋くんへ向けたままだ。

その威圧感に大橋くんは後ずさりをする。




「ここではなにもかもにお金がかかるのよ。もちろん、ここでもね」




そんな……!

それじゃ怪我をしても、体調が悪くなっても救護室を利用することはできないということだ。

そんなのってない!




「でも大丈夫よ。ここではクレジット人間制度が適用されるから」




さっきとは打って変わって、明るい声で女性が言う。

仮面の下でも微笑んでいるのがわかった。