「ちょっと待って」



「え、なんですか?」




大橋くんがキョトンとした表情で女性を見つめる。

処置は終わったし、痛み止めももらったから用事は終わったはずだ。

そう思っていると女性が大きなため息を吐き出した。

仮面の上からでも呆れ顔になっていることがわかるくらいだ。




「治療費は?」





女性の言葉に誰もが驚いて固まってしまった。




「治療費って、でも……」




こういう場合は無料じゃないの?

そんな気持ちが浮かんでくる。

他のメンバーだって、私と同じように考えていたはずだ。




「もしかして、お金ないの?」




女性の声がオクターブ低くなる。

それだけで室内の気温が一度下がったような気がした。




「こ、ここに連れて来られたときに、財布はなくって」