ダイヤモンドへ手を伸ばしてしまいそうになったとき、智道が聞いた。




「あのふたりはもうダメ。使い物にならない」




クマはそう言ってタブレットを取り出した。

画面には遊園地内の様子が映し出されていて、ベンチに座って呆然と空を見上げているふたりの姿があった。

尋は口の端からよだれを垂らし、繭乃はヘラヘラと意味なく笑っている。

あの労働をずっと続けていて精神が壊れてしまったみたいだ。




「それなら、この3億円はすべて現金に返る。それから俺たち4人は遊園地に一千万円ずつ支払って外へ出る」




智道が力強い声で言う。

クマはしばらく無言で智道を見つめていたが「それでいいの?」と、聞いてきた。




「もちろんだ」



「このふたりは外へ出てもどうせ病院行きなのに?」




尋と繭乃のことだろう。

ふたりは私達にひどいこともした。

遊園地から助け出す必要なんてないのかもしれない。

永遠に遊園地の中にいればいい。