施設から脱出してからずっと私を避けているように感じられる。

あれだけ仲が良かったのに……。

そう思うと胸がチクリと痛むのを感じた。

私を裏切り続けていた相手でも、たしかに好きだった時間がある。

その時間はとても幸せで、偽物なんかじゃなかった。

指先がトランプの前で揺らぐ。

当時のことを思い出せば思い出すほど、胸は苦しくなっていく。




「さっさとしろよ」




尋の冷たい声が飛んできて私の中の思い出は一瞬にして氷つく。

そうだ、こいつは私をはめて労働へ行かせたんだ。

もっと前から繭乃と浮気をしていて、平気な顔をして私と付き合っていた。

こんなヤツに、容赦なんていらない!

ようやく調子が戻ってきて、私はトランプを一枚選んだ。

すぐにペアができて、クマが持っている箱の中に入れる。

尋は一瞬視線をこちらへ向けたけれど、私はもう尋と視線を合わせなかったのだった。