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私達は隠れていた建物の陰にいた。

建物を背にして立っているのは繭乃と尋。

ふたりの前に立っているのが私と智道。

それぞれの手にはすでに配り終えたトランプがあって、ゲームの種類はババ抜きに決まっていた。




「じゃ、君から時計回りね」




クマに指示されて私はビクリと体を震わせる。

智道と視線を合わせて心の中で頷く。

大丈夫。

これは大きなチャンスなんだ。

ここで勝利すれば私と智道は労働から開放される。

もう二度と、あの施設に戻らなくてもいいんだ。

ここは絶対に勝たないと。

私は目の前に立っている尋へ視線を向ける。

尋はトランプを見つめていて、少しも私と視線を合わせようとしない。