智道がドアノブに手を伸ばし、回す。

ドアはなんの抵抗もなく開くことができた。

その瞬間智道は外へ転がり出る。

私もこんな空間にはもう1秒だっていたくなくて、大急ぎで外へ出た。

外は施設内の狭い通路だけれど、それでも部屋の中に比べれば空気を吸い込むことができる。

血生臭さからようやく解放されて、私達は何度も深呼吸をした。

落ち着いてきたところに、クマの面をつけた男がふたり、近くに立っていることに気がついた。

廊下に飛び出してきて苦しんでいる私達を無表情にジッと見つめていたのだ。




「女はこっち」



「男はこっちに来い」




男たちがそれぞれ歩き出す。

私と智道は目を身交わせた。

明日になったらまた同じ仕事をさせられることになる。

そうなる前にどうにかできないだろうか。

相談したかった。

だけど私達はスマホもなにもかもを取り上げられていて通信手段はなにもない。

ここで相談すれば男たちにすべて筒抜けだ。

おとなしく従うしかない。