「どれだけほしいものがあっても、俺達には金がない。なにも買うことはできないんだぞ」




智道がそう言っても、ふたりは全く聞いていない。




「お金がないなら、労働をすればいいんだろ?」




尋はそんなふうに気楽にとらえているみたいだ。

その労働がどんなものなのかも、わからないままなのに。

4人のチームのはずが協力的でないふたりの態度にだんだんと気持ちが沈んでいく。

一生懸命出口を探してバカみたいだ。

そろそろ休憩でもしたいな。

そう思ったとき、前方でフェンスによじ登っていくチームを見つけて足を止めた。

近づいてみると胸には三角のバッヂがついていて、私達と同じ男女ふたりずつのチームだ。

その内の筋肉質な男の子がひとりでフェンスを登っていっている。




「上まで行くつもり?」




下で待っていた女の子に声をかける。

おかっぱ頭でおとなしそうな雰囲気をしているその子は小さく頷いた。




「私達のチームで一番筋力のある大橋くんが登ってみるって言ってくれたの。入り口が閉まってたから」




その言葉に私は頷いた。

この子たちも一旦は入場ゲートまで行ったけれど、どうにもならなかったんだろう。

目を細めて大橋くんという人物を下から見上げる。

今フェンスの真ん中辺りまで登っているようで、いいペースだ。

周囲はもうすっかり朝日に包まれてフェンスの向こうが森になっているのも見えた。

森の深さはどれくらいだろうか?

すぐに道路へ出るようにも見えるし、どこまでもどこまでも続いて行っていそうな気もする。

と、そのときだった。

大橋くんの右足が滑ってフェンスから離れた。