すでに薄れてきている白線の手前に立ち、クマへ向けて言う。

その瞬間体に流れていたしびれがスッと引いていくのを感じた。

遊園地のシステムに従う姿勢を見せたからだろう。

クマは無言で私にダーツの矢を渡してくる。

それを受け取り、ルール通り親指と人差し指で持つ。

244センチ離れたダーツ版は、周囲の暗さが増したことにより見えにくくなっている。

それでも文句はなかった。

私は何度か手首を回したあと、姿勢を正した。

全くやったことのないゲームだけれど、やるしかない。

視界の隅には憔悴しきった智道の姿が写っている。

どうしても、助けたい……。




「やっ!」




声をあげて力任せに矢を投げる。

矢はふらふらと揺れてダーツ版に届くことなく落下した。

0点だ。

繭乃が呆れたように笑う声が聞こえてきた。