逃げようとしてもそのまま引き立てられてしまった。

頭皮が引きちぎれてしまいそうな痛みと熱で涙が滲んでくる。




「だから、早く投げろ」




耳元で低い声で脅されて血の気が引いていく。

これが私の知っている尋?

あんなに優しくて頼もしかった尋?

とても信じられなかった。




「なにしてんだよ!」




尋を止めたのは智道だった。

尋の手から力が抜けて、そのすきに智道の後ろへ身を隠す。

尋は面白くなさそうに智道を睨みつけた。




「お前には関係ないだろ? これは俺と恵利の問題だ」



「関係あるだろ、同じチームなんだ!」




智道の言葉に声を上げて笑ったのは繭乃だった。

繭乃は体を曲げて心底おかしそうに笑っている。




「チームって、まだそんなこと言ってんの?」




繭乃の言葉に周囲の温度が下がっていく。




「他のチームはもう誰かを蹴落としていってる。それでもチームだとか言える?」