繭乃が小さく呟いて、勢いよく矢を放った。

矢はまっすぐに飛んでトンッと軽い音を立ててダーツ版に突き刺さる。

矢が刺さったのは30点の輪の中だ。

知らない間に呼吸を止めて見守っていた私は大きく息を吐き出した。




「やった、30点!」




繭乃がその場で飛び跳ねて喜んでいる。

これがいい点数なのかどうか、まだわからない。




「次、2投目」




クマが合図して繭乃がまた表情を引き締める。

ダーツの矢を持つ指先が、さっきよりも様になっているような気がする。

繭乃が投げる瞬間、またしても息が止まる。

もしも矢がダーツ版の外に落下したら?

ダーツ版に全く届かなかったら?

そんな不安が押し寄せてきて背中に汗が流れていくのを感じる。

他人のゲームでこれだけ緊張感があるのだから、自分の番になったときにどうなるかわからない。

繭乃の2投目は40点の場所に刺さった。

なかなかの高得点じゃないだろうか。