「誰かを傷つけてまで手にいれたいものなんてない!」



「いい子ぶってんじゃねぇよ!」




繭乃が私の両肩に掴みかかる。

痛いほどに食い込んだ両手を引き剥がそうとするけれどうまくいかず、そのままふたりして転がってしまう。

それでも繭乃は私から手を離そうとしない。

私は目の前にある繭乃の顔につばを吐きかけた。




「なにすんの!」




咄嗟に身をかわした繭乃の体を両手で押して無理やり引き剥がす。




「さいってー! 汚い!」




頬についた私の唾をジャージで何度もぬぐっている。




「あんたに最低とか言われたくないけど」