繭乃が吐き捨てるように言う。

お金がないと乗り物に乗ることはできない。

そんなの、わかりきったことだ。




けれどクマは体を揺らして「お金はあるじゃない」と答える。




「ねぇ、このクマなに言ってんの?」




繭乃が呆れ顔で振り向く。

私も尋も何も答えられなかった。

みんなジャージのポケットを確認したけれど、財布もお金も、なにも入っていなかったのだから。




「この遊園地の中では、人間そのものがお金の代わりになるんだよ!」




クマの陽気な説明に繭乃が再び視線を向けた。




「乗りたいもの、食べたいもの、買いたいものがあるときは、それを引き換えに労働するんだ、なんとこの遊園地には高額商品の取り扱いもあるから、もちろんそれを購入することだってできるよ!」




クマは両手を天へと突き上げて大げさに驚いて見せている。

要はここでアルバイトをして遊べと言っているのだ。




「遊びたいものもないし、欲しいものもない。私たちを外に出して!」