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「結局、選択肢はふたつしかないよ」




木陰に座り込んでいたとき、繭乃が誰にともなく言った。




「一千万円を手にして外に出るか、それともこの園内で仕事をして暮らし続けるか」




その言葉には誰も返事をしなかった。

もう心身ともに疲れ果てていて、とにかく休みたい。

私は膝を抱えてうなだれたまま顔を上げることもできないでいた。




「意外とさ、悪くないかもしれないよね」




繭乃はまだひとりで話続ける。

誰でもいいから、自分の考えを伝えたいのかも知れない。




「学校行って勉強するよりも、ここで働いた方が将来的な勉強にもなるしね」



「ここで働いても外には出られない」