誘拐されてきたのは私達だけじゃないようだし、これだけの遊園地を貸し切って監禁する意味がどこにあるんだろう。

遊園地ひとつ使うだけでかなりのお金がかかるはずだから、金銭目的ではなさそうだ。

じゃあ、なぜ……?

考えてみてもわからなくてため息をつく。

自分たちはこれからどうすればいいのか、なにかをさせられるのだろうかと、不安が濃くなっていく一方だ。

疲れてしまってその場に座り込んでしまいそうになったとき、ぼふぼふと音が聞こえてきて私達は一斉にそちらへ視線を向けた。

不可解な音がした先にいたのはクマの着ぐるみだった。

歩くたびにぼふぼふと音を立てている。

遊園地のマスコットキャラクターなのか、緑色の毛をしていて、手には緑色の風船をひとつずつもっている。

大きな目玉が私達を捉えたように見えて、思わず後ずさりをした。

可愛いはずのマスコットキャラクターが、今は不気味に見える。




「ちょっとあんた。ここ開けてよ!」




不気味さなんてものともせずにそう言い放ったのは繭乃だった。

繭乃はつかつかとクマへ歩みよると臆することなく睨みつけた。

クマは立ち止まり、ジッと繭乃を観察しているようだ。