雪はホテルのベッドの上で眠ったはずだ。しかし今、全く知らない場所で眠っているのである。家具も、何もかもが違う見知らぬ部屋だ。

「ッ!」

モスグリーンのカーテンを雪は開けた。窓の外に広がっていたのは、ホテルから見えた小さな家々はどこにもなく、ただ木々が広がっている。そして、窓にはまるで監獄のような鉄格子が嵌められており、窓から外へ出ることはできない。

「な、何これ……」

恐怖が込み上げ、雪は部屋のドアに向かって走った。そしてドアノブに手を掛けて部屋から出ようとしたのだが、ドアは全く動かない。押しても引いても動かない。外側から鍵が掛けられているようだ。

「だ、誰か!誰か助けてください!」

突然見知らぬ部屋に閉じ込められ、パニックになってしまった雪は大声を出しながらドアを叩く。何度も何度もドアを叩き、少し疲れてしまった頃、ドアがゆっくりと音を立てて開いた。

「おはようございます。朝ご飯、できていますが食べますか?」