――二年前。
 長嶺光は確かに、部長に退職願を提出した。

 予想通り、上層部並びに人事部総動員で長嶺さんを引き留めにかかった。
 それでも私と結婚するため福岡には行けないと言い切る長嶺さんに、頭を悩ませた人事が出した答えは、福岡行きの話を白紙にし、東京本社内に新設された新規事業推進室への異動に切り替える、というものだった。
 後に長嶺さんは笑顔で言った。

 『賭けで言ってみたけど、本当にうまくいくとは思わなかった~』
 
 ノイーズとしては異例の本社内での異動ということで、周囲から反感の声が上がることも予想されたけれど、長嶺さんの実力なら仕方ない、逆に言えば功績さえ残せば人事に物申せるらしい、という噂が流れてかえって会社の士気が上がったと上層部も悪くない顔をしているのだとか。

 とにもかくにも。

 私たちはずっと一緒にいる。
 




「りーこ」