「んー……熱はなさそうだね」


 光さんが妙に色っぽい空気を醸して言う。


「へぁっ、は、はひ!」

「……俺の奥さんのこと、よろしくね」

「!!」


 光さんはようやくおでこを離すと、ニコッと爽やかな笑顔で田栗くんの頭を撫でた。


「ちょ、ちょっと光さん!田栗くんびっくりしてかたまっちゃってるじゃないですか!」

「そういう理子さんは無自覚に若い男の子を誘惑しないでくださーい。コンプラ委員会に訴えますよー」

「は……!?してませんし!」


 光さんは子供みたいにベッと舌を出してみせると、私たちに背を向けた。
 そこにちょうどスマホに連絡が来たらしく、耳にあてながら去っていく。


「はい、長嶺です。こないだはどうも……あ、そうです。今度のワークショップの件でー……」


 なに今の……? 腹立つ……!