「嘘つかなくていいよ。何言われた?」


 ボロボロと溢れる涙を抑えられない私に、長嶺さんはハンカチを出して拭ってくれながら優しく聞く。

 その仕草も声も、好きだって思って、また涙が溢れてくる。


「っ……わたし……セフレじゃ、ないですよね」


 長嶺さんが目を見張って、すぐに首を横に振る。


「ないよ、セフレじゃない」

「麗華さん、長嶺さんの家にいったことあるって……っ、私は、本命じゃないって」


 子供みたいに泣きながら嗚咽混じりに言う私を、長嶺さんが抱き寄せる。


「違うよ、嘘だよ。理子ちゃんだけだよ。ほかに関係持ってる人もいない、もちろん麗華さんもそういう関係じゃない。本当にこないだ道でたまたま会っただけで、家になんて……ありえないよ。本当に何もないよ」

「っ……」

「俺が好きなのは理子ちゃんだけだよ……信じて」


 私はコクコクと頷いて、小さく「はい」と言う。


「不安にさせてごめんね……」

 
 長嶺さんが私の頭を優しく撫でてくれる。

 私、どうして


「す、みません……っ」


 こんな素敵な日に、長嶺さんに『信じて』『ごめんね』なんて言わせてるんだろう?


「なんで理子ちゃんが謝るの」


 長嶺さんが私の背中を優しくさすってくれる。