ショーを見終わった後、私たちは館内の順路に沿って水槽をめぐった。


「おーすげー。見える?あそこで擬態してんの。あ、こっちにもいる」


 子供みたいに目を輝かせる長嶺さんは嬉しそうに私に話しかけては、


「……わ、ほんとですね。すごい」


 少し反応の遅れる私にちょっと心配そうな顔をする。
 けど、必死にいつも通りを装うとする私に、その心中を知ってか知らずか、困ったように笑うだけだった。

 はたから見たらなんてことない二人だっただろうけれど、内情は、あまりにもぎこちないデートだった。

 私が疑心暗鬼になろうとする自分を押し殺すのに必死な間も、長嶺さんは夢のように優しくて、かっこよくて

 本当に夢だって言われた方が、まだ納得できるぐらいだった。