そのまま私たちは少し早歩きで水族館の中を抜けていって、時間より少し早めにショースペースに着いた。 あいてるベンチに二人で腰かける。


「理子ちゃん」


 呼ばれて顔をあげると、心配そうな目をする長嶺さんと目があう。


「さっきも言ったけど、気にしなくていいよ。麗華さん、こないだ会ったときもなんか嫌なことあって相当参ってたみたいで……八つ当たりしたいだけだと思う」

「……そうなんですね。大丈夫です、気にしてないです!」


 笑顔を作りながらも、不安を拭いきれない私のぎこちなさを察してか、長嶺さんも笑顔に少し不安を滲ませる。


「……あ、そこの売店でなにかあったかい飲み物買ってくるよ。待ってて」

「あ、ありがとうございます……」


 長嶺さんは私の頭を優しくぽんとしてから、小走りで売店の列に行く。

 さっき、麗華さんに向かって堂々と『付き合ってるので』って言ってくれたの、嬉しかった。
 私が不安になってるのわかってすぐフォローしてくれたことも。
 ほんと優しい。 好きだな。

 ……そう思うのに。


 ――こないだ会ったときもなんか嫌なことあって相当参ってたみたいで

 ――八つ当たりしたいだけだと思う


 麗華さんのことわかってるみたいな言い方だったな、とか
 疑うようなこと考えてしまう卑屈な自分が、本当に嫌だ。
 長嶺さんが素敵であればあるほど、不安が増していくなんて……どうかしてる。

 
 全然似合ってない?


 ……そんなこと

 言われなくてもわかってる