食事と夜景を思う存分堪能した私たちは、店を出た。
 水族館はここから歩いて五分ほど。海上にかかる大きな橋を渡った先にある。

「水族館なんて久しく来てないなー。 理子は?」

「私も小学校の遠足以来かもしれません」

「すげぇ前じゃん。てか小学生の理子か。見たいな。今度卒アルとか見せて」

「嫌です」

「あはは、なんで」


 長嶺さんは終始上機嫌で、スーツじゃないのも手伝ってか、仕事中よりも少し脱力した雰囲気が可愛い。
 イルミネーションで彩られた橋を行く人はカップルばかりだ。みんな目的地は同じらしい。
 これまでの私のクリスマスと言えば、仕事終わり、コンビニでちょっと奮発してクリスマス限定スイーツを買って、アユコは必ず彼氏とデートだったので、一人で中学の時から使ってるクタクタのジャージを身にまとい、テレビを見ながら家にある余りものでビールを飲む、それだけの日。
 こんなヒールを履いて、眼鏡を外して、こんなキラキラした道を彼氏と歩く日が来るなんて思いもしなかった。
 長嶺さんは……きっといつも、女の子といたんだろうな。

 って、わたしまた暗いこと考えようとしてる……!

 なんか私、長嶺さんと付き合ってから舞い上がったり暗くなったり……気分の浮き沈みが半端ない。
 みんなこんなもんなんだろうか。私が酷いんだろうか。