寒いのだろう、体をぶるぶると震わせる彼女が俺の声にピクッと反応して顔をあげた。

　目と目が合って、ゾクリとする。


「長嶺さん……？」


　――志戸水(しとみず)麗華(れいか)。


　以前、俺にセクハラされたと訴えて、俺がそれまで大事に育てた契約を一瞬で白紙にしてみせたシトミズカンパニー社長の愛娘さんである。


「……お、お～久しぶり、です～」


　いくら全女子の味方な俺と言え、された仕打ちの酷さを考えるとどうしても笑顔が苦くなった。
　対して麗華さんはそれに応えることなくプイッとそっぽを向いてしまう。

　……ほう。　そうくる。

　さすがにイラッとして嫌味のひとつでも言ってやろうかと考えた時、すぐ近くを通った年配サラリーマンの舌打ちが聞こえた。


「ここ人通り多いし場所変えませんか。　歩けます？」


　麗華さんはばつが悪そうな顔をしつつも俺の提案に頷いて、少しよろけながら立ち上がった。
　すると、麗華さんのシャツのボタンが千切れていて中のレースの下着が見えた。


「！？」


　ギョッとして、慌てて自分が着てる上着を彼女にかけた。　それから急いでそこの公園に彼女を連れて行ってベンチに座らせる。