⌒* ⌒*




「最悪です。 昨日と同じ服で出社なんて」


 いつもの眼鏡をかけた理子ちゃんは全身鏡の前で服の皺がないかチェックしながら不満を口にした。

 結局ギリギリまで可愛がってしまったため、一度家に帰って着替える予定が狂ってしまった彼女はご立腹の様子。

 そんな彼女の後ろから覗き込むようにして俺はネクタイを締めた。


「大丈夫だよ、みんなそんな気にしてないって。 堂々としてれば『あーなんか事情があるんだなー』くらいで済むもんだよ」


 一理あるかもって顔するちょろい理子さんを後ろから抱きしめて、髪をひっ詰めた彼女の露わになったうなじにキスしてみる。
 

「っ……、」


 嬉しいのか、笑うのを我慢してるのか、逆に変な顔になってる彼女につい笑ってしまう。


「可愛いなぁ、もー」


 首筋にちゅ、ちゅ、とキスを落としていくと、鏡越しにどうしたらいいのかわからないって表情の彼女と目が合う。


「……やっぱ今日サボろ」

「! だめです」


 花樫さんは一瞬で仕事モードにスイッチを切り替えちゃったらしく、背筋を伸ばして上着を着ると玄関に向かい、いつものパンプスに足を入れた。
 寂しく思いつつ、俺も理子ちゃんに続いてコートを羽織って革靴に足を入れた。