第4話
⚪︎泉月のマンションの部屋でリビング
陽波と泉月はソファに隣同士に座っている。
テーブルには飲み物、記入済みの婚姻届、契約書が乗っている。
陽波（……とは言っても、どうすればいいのか）
陽波は契約書の文字と睨めっこをしていた。
――第一条。
お互いの生活、育ってきた環境、文化や価値観、趣味などの違いを尊重し合いこの生活において平等であることを自覚しお互いを慈しみ、助け合うものとする。
《回想》
泉月「じゃあ、早速なんだけど。第一条から考えよう。自分がしてほしくないこととか嫌なことを書こう」
陽波「そうですね！」
陽波はこの時点ではワクワクとしていたが、いざ自分のしてほしくないこととか嫌いなことを書けと言われても思いつかない。
《回想終》
陽波「全っぜん、思い浮かばないんですっ！ 東雲さんは描けました！？」
泉月「……あはは、恥ずかしながら書けてない。結構難しいね。じゃあ、この内容は思いついたら書くことにしてまず自己紹介からする？ 話しているうちに何か思い浮かぶかもしれないし」
陽波（確かに、それは一理あるかも）
お互い背筋を正し、泉月から簡単な自己紹介をする。
泉月「東雲泉月。泉に月でいつきって呼ぶ。好きな食べ物は、オムライスと唐揚げ。嫌いなものは野菜で」
陽波（好き嫌いが小さい子みたい……意外と可愛いんだなぁ。ご飯作る機会があったら作ろう）
泉月「得意な教科は家庭科以外。苦手な教科は家庭科」
陽波「家庭科はだめなの？」
泉月「あぁ、もう壊滅的にだめ……」
陽波「意外だね。東雲さんはなんでも完璧にこなすイメージでした。じゃあ、家事は私得意なので私がやりますね」
陽波（それじゃあ、この項目に書いておこう）
ペンを走らせて陽波は【家事は伊瀬見陽波が担当する】と書く。すると、泉月もペンを持ち【だが、無理はしないこと。】と付け加えた。
泉月「無理だけはしないで。家事をしてくれるのはとても嬉しいけど、しんどかったらテイクアウトでもデリバリーでもすればいいからね」
陽波「わかりました、そうします」
泉月「うん。趣味は、読書かな。本屋さん巡りも好きだよ、あとは運動とか好き」
泉月が一通り自己紹介をすると、陽波も自己紹介を始める。
陽波「私は、伊瀬見陽波。太陽の陽に波って書いてヒナミです。食べ物は好き嫌いないです……でも、強いて言うなら甘いものが好きで、スイートポテトとかチーズケーキが好きかな。嫌いな食べ物はないです」
泉月「え、ないの？ 嫌いな食べ物」
陽波「うんまぁ、特には。なんでも食べられる。昔、おばあちゃんが食べ物残すと“もったいないお化け”が出るっていわれたからかも」
陽波（私もそれを信じているから子供っぽいか……お化けなんて迷信のようなものだし）
泉月「そうなんだ。すごいね」
陽波「そう、かな？」
泉月「そうだよ。素敵だと思う。そうやって言ったお祖母様も、それを信じて嫌いな食べ物がない伊瀬見さんも」
陽波はそう言われて心がポカポカする。
陽波「あ、それで……好きな教科は、文系かな。あとは家庭科。嫌いな教科は、理系が無理。数学とか化学とか生物は頭が痛くなる」
泉月「そうなんだ。じゃあ、嫌いな教科は教えるね」
陽波「本当？ 嬉しい。恥ずかしいんだけど、理系はいつも赤点回避ギリギリなんだよね。助かります」
陽波はペコっとお辞儀をすると、泉月は「いえいえ」と大丈夫だというジェスチャーをする。
陽波「私は以上です、ご清聴ありがとうございました」
泉月「いや、プレゼンじゃないんだから。でも、結構、書けたね」
陽波「そうですね、話しながらの方がいいのかもしれないですね」
泉月「だね。あの、提案なんだけど……一緒に住むんだし、名前で呼び合わない？ 無理しなくてもいいけど、距離は縮まるかなって」
陽波（名前呼び！？ 急に難易度が上がった！ だけど、名前で読んだ方が自然だよね。でも恥ずかしい……）
陽波「う、うん。だけど、ゆっくりでもいいかな？ 男の子に名前呼びしたことなくて」
泉月「全然大丈夫。そっか、じゃあ俺が第1号だ。嬉しいな」
陽波「……え、嬉しい？ なんで？」
泉月「だって、好意を持ってる女の子が初めて呼ぶ男子の名前が俺ってなんかすごい嬉しい」
泉月はまるで人懐っこい犬みたいなキラキラした表情で陽波に言う。こんな表情もするんだと陽波は思って、自分しか知らないと思ったら陽波は心の中で嬉しく思う。
泉月「改めて、よろしくね。陽波ちゃん」
陽波「うんっ……よ、よろしくお願いします。い、泉月くん」
陽波は名前をただ呼ばれただけなのに、胸が高鳴る。陽波は身体中の熱を感じる。
陽波（こんなふうに一々なって、一緒に暮らせるんだろうか……）
優雅に飲み物を飲む泉月を見ながら陽波は思った。
⚪︎泉月のマンションの部屋でリビング
陽波と泉月はソファに隣同士に座っている。
テーブルには飲み物、記入済みの婚姻届、契約書が乗っている。
陽波（……とは言っても、どうすればいいのか）
陽波は契約書の文字と睨めっこをしていた。
――第一条。
お互いの生活、育ってきた環境、文化や価値観、趣味などの違いを尊重し合いこの生活において平等であることを自覚しお互いを慈しみ、助け合うものとする。
《回想》
泉月「じゃあ、早速なんだけど。第一条から考えよう。自分がしてほしくないこととか嫌なことを書こう」
陽波「そうですね！」
陽波はこの時点ではワクワクとしていたが、いざ自分のしてほしくないこととか嫌いなことを書けと言われても思いつかない。
《回想終》
陽波「全っぜん、思い浮かばないんですっ！ 東雲さんは描けました！？」
泉月「……あはは、恥ずかしながら書けてない。結構難しいね。じゃあ、この内容は思いついたら書くことにしてまず自己紹介からする？ 話しているうちに何か思い浮かぶかもしれないし」
陽波（確かに、それは一理あるかも）
お互い背筋を正し、泉月から簡単な自己紹介をする。
泉月「東雲泉月。泉に月でいつきって呼ぶ。好きな食べ物は、オムライスと唐揚げ。嫌いなものは野菜で」
陽波（好き嫌いが小さい子みたい……意外と可愛いんだなぁ。ご飯作る機会があったら作ろう）
泉月「得意な教科は家庭科以外。苦手な教科は家庭科」
陽波「家庭科はだめなの？」
泉月「あぁ、もう壊滅的にだめ……」
陽波「意外だね。東雲さんはなんでも完璧にこなすイメージでした。じゃあ、家事は私得意なので私がやりますね」
陽波（それじゃあ、この項目に書いておこう）
ペンを走らせて陽波は【家事は伊瀬見陽波が担当する】と書く。すると、泉月もペンを持ち【だが、無理はしないこと。】と付け加えた。
泉月「無理だけはしないで。家事をしてくれるのはとても嬉しいけど、しんどかったらテイクアウトでもデリバリーでもすればいいからね」
陽波「わかりました、そうします」
泉月「うん。趣味は、読書かな。本屋さん巡りも好きだよ、あとは運動とか好き」
泉月が一通り自己紹介をすると、陽波も自己紹介を始める。
陽波「私は、伊瀬見陽波。太陽の陽に波って書いてヒナミです。食べ物は好き嫌いないです……でも、強いて言うなら甘いものが好きで、スイートポテトとかチーズケーキが好きかな。嫌いな食べ物はないです」
泉月「え、ないの？ 嫌いな食べ物」
陽波「うんまぁ、特には。なんでも食べられる。昔、おばあちゃんが食べ物残すと“もったいないお化け”が出るっていわれたからかも」
陽波（私もそれを信じているから子供っぽいか……お化けなんて迷信のようなものだし）
泉月「そうなんだ。すごいね」
陽波「そう、かな？」
泉月「そうだよ。素敵だと思う。そうやって言ったお祖母様も、それを信じて嫌いな食べ物がない伊瀬見さんも」
陽波はそう言われて心がポカポカする。
陽波「あ、それで……好きな教科は、文系かな。あとは家庭科。嫌いな教科は、理系が無理。数学とか化学とか生物は頭が痛くなる」
泉月「そうなんだ。じゃあ、嫌いな教科は教えるね」
陽波「本当？ 嬉しい。恥ずかしいんだけど、理系はいつも赤点回避ギリギリなんだよね。助かります」
陽波はペコっとお辞儀をすると、泉月は「いえいえ」と大丈夫だというジェスチャーをする。
陽波「私は以上です、ご清聴ありがとうございました」
泉月「いや、プレゼンじゃないんだから。でも、結構、書けたね」
陽波「そうですね、話しながらの方がいいのかもしれないですね」
泉月「だね。あの、提案なんだけど……一緒に住むんだし、名前で呼び合わない？ 無理しなくてもいいけど、距離は縮まるかなって」
陽波（名前呼び！？ 急に難易度が上がった！ だけど、名前で読んだ方が自然だよね。でも恥ずかしい……）
陽波「う、うん。だけど、ゆっくりでもいいかな？ 男の子に名前呼びしたことなくて」
泉月「全然大丈夫。そっか、じゃあ俺が第1号だ。嬉しいな」
陽波「……え、嬉しい？ なんで？」
泉月「だって、好意を持ってる女の子が初めて呼ぶ男子の名前が俺ってなんかすごい嬉しい」
泉月はまるで人懐っこい犬みたいなキラキラした表情で陽波に言う。こんな表情もするんだと陽波は思って、自分しか知らないと思ったら陽波は心の中で嬉しく思う。
泉月「改めて、よろしくね。陽波ちゃん」
陽波「うんっ……よ、よろしくお願いします。い、泉月くん」
陽波は名前をただ呼ばれただけなのに、胸が高鳴る。陽波は身体中の熱を感じる。
陽波（こんなふうに一々なって、一緒に暮らせるんだろうか……）
優雅に飲み物を飲む泉月を見ながら陽波は思った。
